目次
- 校正で最も手間がかかるのは“用語の統一ルール”
- 用語統一をAI任せにしてみた実験結果はいかに?
- 用語統一表はAIが作る時代? 自動抽出の可能性
- AI活用は“ルール設計”がすべて! 人の役割はここにある
校正で最も手間がかかるのは“用語の統一ルール”
こんにちは。校正担当のD橋です。
校正の現場でよくあるのが、クライアントごとに定められた用語のルールや指示です。
「お客様」か「お客さま」か、「メンテナンス」か「保守」か。
どちらも意味としては通じるけれど、表記に関しては明確な“指定”があるケースが多く、「どちらが正しいか」ではなく「このクライアントはどちらを使うか」が重要になります。
しかし、そのルールは案件ごとに異なり、覚えておくのは至難の業です。
そこで今回は、ChatGPTに用語統一ルールを教え、その指示通りに文章を校正させてみるという実験を行いました。
用語統一をAI任せにしてみた実験結果はいかに?
まずは、以下の用語統一ルールをChatGPTに明示しました。
このルールに基づき、ChatGPTに文章をチェックさせて表記ゆれを正しく指摘できるかどうかを検証します。
2種類の文章で確認しました。
🧪 チェック例①
■使用プロンプト
以下の文章を読み、用語統一ルールに従って、誤っている表記があれば指摘し、正しい表記を示してください。
▼用語統一ルール:
- お客さま → お客様
- 働きかた改革 → 働き方改革
- 保守 → メンテナンス
- 新興企業 → スタートアップ
- データ・ベース → データベース
- サインイン → ログイン
▼文章:
本プロジェクトは働きかた改革を推進する新たな取り組みです。従業員一人ひとりのライフスタイルに寄り添い、お客さまのニーズに応える柔軟な働き方を目指します。なお、システムの導入後は保守も定期的に行い、安定稼働を確保します。新たな新興企業との提携により、業務の効率化と技術革新を実現します。また、すべてのデータは専用のデータ・ベースに格納され、安全に管理されます。
■このプロンプトをChatGPTに入力した結果がこちらです。
✅ 結果
「働きかた改革 → 働き方改革」「お客さま → お客様」「保守 → メンテナンス」など、すべて正しく指摘されました。
文脈に依存しがちな「新興企業 → スタートアップ」や「データ・ベース → データベース」もルール通りに修正案が出され、用語の判断基準が明確であれば精度高く動作することが確認できました。
🧪 チェック例②
■同様のプロンプトでチェックした結果がこちらです。
✅ 結果
すべての用語に対して、ルールに従った修正文が提示されました。
ChatGPTは、文脈よりも明示されたルールを優先して判断する性質があり、校正指示さえ明確であれば高精度な結果が得られるとわかりました。
用語統一表はAIが作る時代? 自動抽出の可能性
今度は逆に、ChatGPTに文章を読ませて表記ゆれ候補の一覧を抽出させるというアプローチを試してみました。
📝 文章サンプル
■使用プロンプト(候補抽出用)
以下の文章を読んで、表記ゆれが発生している可能性のある語句を抽出し、候補ペアをリスト化してください。
各ペアには簡単なコメントも添えてください。
▼文章:
当社では、メンテナンス業務の簡略化と業務効率の向上を目指し、複数のデータ・ベースを統合しました。
最近ではスタートアップ企業とのアライアンスも活発化しており、お客さま向けに提供しているオンラインサービスの品質も向上しています。
ユーザーはポータルサイトからログインし、カスタマイズ可能なダッシュボードを通じて各種機能にアクセスできます。
また、働きかた改革の方針に則り、テレワーク対応の機能も順次実装されてきました。
一方、社内の別プロジェクトでは、保守体制の強化や新興企業向けの導入支援なども進めています。
なお、一部の文書には「お客様」という表記も見受けられるため、今後の運用においては表記統一が課題となりそうです。
■このプロンプトをChatGPTに入力した結果がこちらです。
このように、特に校正対象として意識すべき用語が一覧化されることで、統一ルール作成や事前の確認にも活用できることがわかりました。
AI活用は“ルール設計”がすべて! 人の役割はここにある
今回の検証を通して、ChatGPTは「ルールを明確に提示すれば、それに従って校正支援ができる」ことが明らかになりました。
- クライアントごとの用語統一の指示に対応可能
- 文脈に左右されず、ルール優先で判断
- 表記ゆれ候補の抽出にも活用できる
一方で、ルールが不明瞭だったり曖昧だったりすると誤判断につながるため、人間によるルール設計と確認は不可欠です。
✔ 今後の展望
- クライアント別の「用語統一GPT」構築
- WordやPDFへの自動チェック連携
- 修正指摘一覧や統一候補リストの自動出力
“覚える辞書”としてのChatGPTの可能性は、校正の現場で確実に力になってくれると実感できました。
「用語の表記に振り回される日々を、そろそろ終わらせたい」方は、
ぜひ一度お試しください!