新卒校正者の研修奮闘記(2) 先輩社員の「お手製テスト」に挑む(前編)

校正

目次

「先輩社員のお手製テスト」に挑む!(前編)

タクトシステムの校閲室に2025年度新卒採用で入社したなまこです。

「新卒校正者の研修奮闘記」では、新卒の校正者が日々の研修を通じて何を学び、どのようにして校正者になっていくのか、その様子を綴っています。

第2回となる今回は「先輩社員のお手製テスト」に挑んだ記録をご紹介します!

 

テストを通して気づいたのは、知識よりもどこを見るか・なぜそうなるのかを考える「視点」が問われているということ。校正者としての目はどう育つのか? その過程をお届けします。

 

入社4週目のある日、先輩社員から「テストを解いてみてほしいのですが…」と声をかけられました。なんと、先輩社員が手作りで用意してくださるとのこと!

「なんて贅沢なの(うっとり)」と思ったと同時に、「先輩に時間を割いてつくってもらった問題。解けなかったら…アカン…」と背筋が伸びました。

 

お手製テストは全4回。毎回異なるテーマから出題されました。

回答形式は自由で、文章でも箇条書きでも絵でもOK。

回答の際は本やWebにあたってもよいが、自分の言葉で書くことが条件でした。

 

また、「問題文に誤字脱字などがあれば、校正記号で直すこと」とい校正者らしい指示もあり、「こういうの好き」と内心ニヤニヤしていました。

(画像は実際のテスト用紙、これは第4回のもの)

 

 

テストの流れは、まずは自分で問題を解き、解答を先輩社員に提出して採点してもらい、後日マンツーマンで解説してもらうという感じでした。

 

前編となる今回は、第1・2回のテストを振り返りながら、得た気づきや衝撃を受けたことなどをご紹介します!

実際に出題された問題も抜粋して載せているので、みなさんもぜひ考えながら読んでみてください!

【第1回】校正の工程が分けられている理由とは?

ドキドキの第1回では、制作物が完成するまでの流れを問う基礎的な問題や、校正に工程があることの意味を考えさせられるような問題が出題されました。

出題内容は次の通りです。

【第1回の問題】

・用語説明の問題(初校・再校・校了)
・入稿から下版までの流れを並び替える問題

・引き合わせと素読みはそれぞれどんなときに行うもの?

・なぜ校正の工程は分けられているの?

 

気合を入れて、まずはこれまでに得た知識をフル活用して答えてみました。

が、解いているうちに自分の知識が正しいのか不安になり、結局、本をガッツリ読み直して慎重に解答しました(笑)。

 

先輩の解説パートでは、解説の前に、初めて実際のゲラや台割を見せていただきました。

テンション爆上がり。

プロの校正者が実際に入れた赤字を見るなんて、学生時代は貴重だったので、ワクワクを超えてゾクゾクしたのを覚えています。

 

さて、今回のテストで特に印象に残っているのは、「なぜ校正の工程は分けられているのか」という問題です。

校正の作業は、初校→再校→三校…と工程が分けられているのですが、これは当たり前のことだと思い込んでいて、理由を深く考えたことはありませんでした。

 

 

そんな私がなんとか捻り出した解答は、

①赤字の反映ミスがあるかもしれない ②クライアントから途中で内容修正が入る可能性がある

というものです。

 

無事、見当違いなことは言っていませんでした!

しかし、先輩の解説を聞いてみると、工程が段階的である理由はそれだけではありませんでした。教わった理由は主に4つあります。

 

まず、精度を上げるためです。

工程を分け、2度、3度と繰り返し見直すことで、精度を高めることができます。

また、情報の更新に柔軟に対応することも可能になります。

実際の制作では、途中で写真や文言が差し替えられたり、原稿自体が更新されたりすることがあります。
校正の工程を分けておくことで、どの工程でどんな修正が加わったのかを整理しながら、反映漏れを防ぐことができるのです。

 

2つ目に、図版や画像などの素材が支給されるタイミングはバラバラである、という理由が挙げられました。

特に、まだ世に出ていない新製品を扱うカタログは、画像を新たに作成する必要があるため、原稿は届いたけど画像は後で送られる「後送」もよくあるそう。

最終段階でようやく正式の画像が届くこともしばしばだそうです。

 

3つ目に、目次や索引を正しくつくるためです。

目次や索引は本編の内容が確定していない段階では校正しづらく、校正後にページの移動や追加・削除によってノンブルが変わることがあれば、再確認する必要性が出てきます。

そのため、内容が確定している可能性が高い後半の工程で校正することで、目次や索引の精度を上げることができるのです。

 

最後に、ポスターなどのビジュアル中心の制作物は段階的にデザインを改良していくからという理由もあるそうです。

 

先輩社員のお話を聞くまでは、校正とは完成に近い状態の原稿をもとに作業するものだと思っていました。

しかし実際は、「まだ完成していない原稿」に対して、その時できる範囲で最大限チェックするという姿勢が求められるのかもしれません。

校正という仕事は思っていたよりも流動的なものに向き合っていくのだなと勉強になりました。

【第2回】データの構造まで考える!?

第2回のお手製テストでは、DTPに関する問題が中心に出題されました。

今回は校正者がゲラの内容を確認するだけでなく、データの構造についても知っておくメリットを実感することになったのです。

 

第2回の問題は以下のようなものでした。

【第2回の問題】

・用語説明の問題(DTP・写植・責了・レンポジ)

・DTPの「三種の神器」は何か? それぞれどういった用途で使用される?

・ラスターデータとベクターデータの違い、それぞれのメリット・デメリットは?

・RGB or CMYKどちらの方法で再現される?

(スマホで撮影した写真、雑誌のグラビアページ、色見本帳、ウェブサイト上の画像)

 

今回、最も難しかったのは、「ラスターデータとベクターデータのメリット・デメリット」を答える問題です。

どちらの単語も聞いたことがなく、どっちがどっちか全くわかりませんでした。

 

「ラスターデータ」と「ベクターデータ」とは何か、学んだことを早速披露してみます。

簡単に言うと、ラスターデータは点の集まりでできており、主に画像に使われます。拡大してみると画像を構成している点が見えてきます。

ベクターデータは線でできており、イラストやロゴ、図形に使われるようです。線を数値化して表しているので、拡大しても画質が変わらないという利点があります。

…と、わかったように書いてみましたが、文章の説明だけではあまり想像がつかなかったのが本音です。

 

そこで解説パートでは、先輩社員が実例を挙げて教えてくださいました。

実例とは、とあるチラシの原稿を出力する際に発生した問題です。

 

これは製版印刷ではなく、お客様自身がPCからプリンターで出力して使用するタイプのチラシでした。

そのチラシの背景に複雑な総柄模様が入っており、それら一つひとつがベクターデータで作成されていました。

ベクターデータということは、複雑なほど線や点の数が多くなるため、出力する際の処理に時間がかかり、なかなか出てこないという問題が発生。

これをラスターデータに変換(つまり画像として固定)したことで処理が速くなり、印刷時間が短縮されたそうです。

 

見た目は同じように見えても、中身がどのようにつくられているかが印刷スピードに影響するのですね。校正とは文字を見る仕事だと思っていましたが、データの構造まで考慮する場面があるとは。

 

このことに気づいたと同時に、実際に校正の仕事を進めていく中で、そんな細部の違いを見抜ける日は来るのだろうか、と不安も芽生えました。

形としては見えないところにも目を向けられる校正者になれますように…。

 

余談ですが、今回の研修の冒頭で先輩社員から次のような質問が投げかけられました。

――「そもそも、なぜDTPといえばMacだと思いますか?」

第1回のテストに引き続き、あたりまえだと思っていたことを問われ、脳がフリーズ。

こんな問いを思いつく先輩社員は、きっと日頃から問い続けることを忘れないのだろうなと、終始尊敬の眼差しを向けていました(もちろん今も)。

 

さて、今回の研修奮闘記では第1・2回の先輩社員「お手製テスト」を紹介しました。

問題に苦戦しながらも、知識を身につけるだけでなく、それらをどう現場で生かしていくのかという実践者目線の考え方を学ぶことができました。

 

次回の後編では第3・4回「お手製テスト」の奮闘記録を綴りたいと思います。

「印刷の際に起こる現象」「製本の違い」など、これらに校正者はどのように向き合っていくのか…乞うご期待!