新卒校正者の研修奮闘記(3) 先輩社員の「お手製テスト」に挑む(後編)

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「先輩社員のお手製テスト」に挑む!(後編)

こんにちは! タクトシステムの校閲室に2025年度新卒採用で入社したなまこです。

「新卒校正者の研修奮闘記」では、校正未経験で入社した新入社員が、どのような研修を受け、どのようにして校正者として成長していくのか、その過程を綴っています。

 

第3回となる今回は、前回に引き続き「先輩社員のお手製テスト」に挑戦した記録をお届けします。

前回の記事はこちら→ 新卒校正者の研修奮闘記(2) 先輩社員の「お手製テスト」に挑む(前編)

 

改めてお手製テストについて説明すると、テストは全4回で構成され、毎回異なるテーマから出題されました。

解答する際は、本やWebで調べることは可能ですが、自分の言葉で答えることが条件。

まずは自分で問題を解いて、先輩社員が採点したのちに、マンツーマンで解説してもらうという流れで進みました。

 

今回は後編として、第3・4回のテストを振り返りながら、得た気づきや衝撃を受けたことなどをご紹介します!

実際に出題された問題も抜粋して載せているので、みなさんもぜひ考えながら読んでみてください!

【第3回】トンボ、モアレ、ピンホールって印刷段階の話じゃないの?

第3回では、プレス・プリプレスに関する問題が中心に出題され、「トンボ」「モアレ」「ピンホール」といった印刷現場でよく聞く専門用語が出てきました。

今回のテストでは、これらが印刷現場に限った話ではなく、校正者が確認すべきチェックポイントでもあるという新たな発見がありました。

【第3回の問題】

・「キンアカ」「リッチブラック」をプロセスカラーで表す際、どのように指定するのが一般的?

・「トンボ」はどのような目的で使われている?

・校了以降の流れを工程順に並び替える問題(校了、下版、刷版、製本、断裁)

・モアレ、版ズレ、ドライダウン、ピンホールという現象についてそれぞれ説明

・オーバープリントとノックアウト、それぞれの設定を使う際の注意点とは?

 

出題形式はシンプルで、満点を狙えるかも!と意気込んだのですが、いざ解いてみると、キンアカ、ピンホール、ノックアウトなど、初見の単語が続々と登場し、早々に撃沈。

必死に本やWebで調べながら解答欄を埋めました。

 

さて、今回の解説で特に重要だと感じたのは、「トンボ」「印刷の際に起こる現象」についてのお話です。

先輩社員からは用語の意味だけでなく、校正者として何を意識して、どこを見るべきかというポイントを教えていただきました。

 

まずは、「トンボ」について。

トンボとは、印刷物を仕上げる際の目印になります。

例えば、紙をどこで切るのか、どこまで色を伸ばすのかを示してくれます。

 

種類によって役割が異なり、折トンボは「どこで折るか」を、コーナートンボは「どこで断裁するか」を確認するために使われます。

このトンボは製本の段階で力を発揮するものだと思っていましたが、校正作業にも重要な役割を果たすそうです!

 

例えば、校正の際に折トンボに沿って線を引き、折り目が文字にかかっていないか背が厚さに対応しているかを確認したり、色校時にはコーナートンボを見て、版ズレ(印刷する際、色を重ねる位置がずれる現象)が起こっていないかを確認したりすることを教わりました。

なるほど、トンボは単に寸法の目安になるだけでなく、校正作業の重要な道具となるのですね!

 

また、あおり校正(2つの異なる原稿を重ねてパタパタする校正方法)をする際にもトンボの位置を重ね合わせて行うと聞きました。

それだけ重要なものならば、「そもそもトンボの位置が正しいかどうか」を確認するのも校正者の重大な任務なのではないか?と考えたりもしました。

 

続いて、「印刷の際に起こる現象」について。

テストの問題にもなっていた版ズレモアレ(意図しない縞模様や波模様が発生する)、ドライダウン(印刷直後は鮮やかに見えても、乾くと色が沈む)やピンホール(インクが紙面に乗らず、小さな白い点ができる)といった現象は、実際に刷ってみて初めて気づくことがあるのだそうです。

 

つまり、DTP(校正の前段階)では気づくことが難しいため、校正者がこれらの現象について意識を向け、ゲラに画像がついたタイミングで確認する必要がある、というわけなのです。

 

こんなところまで気を配る必要があるわけですが、当然、全てを確認することは難しいですし、時間もかかります。

先輩社員からは、表紙やビジュアルがメインのページなど、目立つ部分を優先的に確認していくようアドバイスをいただきました。

 

この話を聞き、限られた時間内でどのレベルの校正が求められているのかを意識しながら作業を進め、致命的なミスを防ぐために優先順位をつけて校正することが必要なのだなと感じました。

 

校正者は細かい文字に注目するというイメージが強いですが、実際は全体的な仕上がりを守る人でもある。そんな視点を得られた第3回テストでした!

【第4回】綴じ方が変われば、見るべきポイントも変わる

「製本の種類や綴じ方は、校正者の仕事にはあまり関係ない」。
正直、そう思い込んでいました。綴じ方の名前は聞いたことがあっても、それが校正の現場でどう影響するかなど考えたこともなかったのです。

 

最終回となる第4回のテストでは、製本の種類や綴じ方の違い、さらに綴じ方の変更にともなう注意点など、実務に即した問いが出題。

綴じ方が変わることで、校正で見るべきポイントまで変わってしまう――そんな事実に気づかされました。

そして最後に先輩社員から伝えられたのは、校正者としての大事な心構えについてでした。

 

最終テストの問題は下記のとおりです。

【第4回の問題】

・上製本と並製本の違いをできるだけ短い言葉で説明

・用語説明(束見本、背丁・背標、四六判)

・本の綴じ方を4つ挙げ、それぞれの特徴を説明

・「当初、無線綴じで製本する予定だったパンフレットが、ページ数減により中綴じに変更されることになりました。どのような点に注意したらよいでしょうか。思いつくままに挙げてみましょう。」

 

最初の問題は上製本と並製本の違いを「できるだけ短い言葉で」説明するものでした。実は、最も苦戦した問題がこれです。字数制限がある方が難しい…。

結局、枠いっぱいに小さな字を詰め込んで解答しました(笑)。

 

対して、最終問題では、製本方法が無線綴じから中綴じに変更された際の注意点を「思いつくままに挙げてみましょう」と高さ5cmほどの解答欄が設けてあり、こんなに思いつくか…と内心震えました。

根性でなんとか次のように解答欄を埋めました。

 

・中綴じは4ページ単位で作成する必要があるため注意が必要

・もともと無線綴じということは、ノドの余白が広めにとってあるため、見開きが大きく開く中綴じに合わせて修正する

・中綴じはページ数が多くなると、内側のページが外に飛び出して、断裁ラインがずれやすくなるため、小口側の使えるスペースが減る

このように答えてみました。

いずれも正解の評価をいただいたものの、先輩社員によると、注意すべき箇所はまだまだあるそうです。

 

例えば、特色を使ったページはないか背に文字は入らないか(中綴じは背をつくることができないため、背に文字を入れることはできない)、面付けが変わる点(中綴じは見開きを重ねて綴じるため、先頭と末尾のページが最初の折にくる)、ダブルトリミングが設定された図版はないか、などなど。

 

解説を聞いて、綴じ方の種類を知っているだけでは足りないのだと気づきました。
それぞれの特徴を理解したうえで、実際に綴じ方が変更されたときに、得た知識を思い出して対応できる力を身につけておかなければならないのだと、ハッとしました。

 

しかし、なぜ校正者が製本の工程に関する知識を持っておく必要があるのでしょうか?
一見すると、製本や印刷といった「下版後の仕事」は校正者には関係ないと思われがちです。

けれど実際にはそうとも言い切れないことを教わりました。

 

例えば、無線綴じから中綴じに変更になった場合に、面付けのノンブルが正しく並んでいるか、ノドの余白が広すぎないか、ページ数が4の倍数になっているか――こうした点を校正の段階で確認しておくことで、後工程の作業がスムーズに進みます。

逆にここで見落とすと、印刷所でトラブルが発覚し、データを再びDTPに戻して修正する必要が出てしまうのです。

さらに、印刷所のスケジュールは決まっているため、かなり短時間での作業が求められることになるそうです。

 

先輩社員からは「だからこそ、校正者は、製本のような一見離れた領域も自分事として考えられる姿勢が大切なんです」と教えてもらいました。

 

本を読むことで知識を蓄えることはできますが、それを現場でどう生かすことができるのかという視点はなかなか身につかないと思います。

この「先輩社員お手製テスト」を受けることで、先輩社員の生の声を聞きながら、校正という仕事をよりリアルに想像することができました。

 

他方で、一度学んだからこそ、失敗してはいけないことが増えたという緊張感が増したのも事実です。

経験を積みながら少しずつ視野を広げて、先輩社員のように文字だけではなく、デザインやデータ形式などについても考えられるワンランク上の校正者になりたい!と思ったのでした。

 

さて、次回は「校正の練習問題に挑戦」です!

『日本語お稽古帳』という問題集を使い、校正の練習に取り組みました。

正しい言葉の選択に悩みながらも、言葉と向き合う時間の中で見えてきた気づきを次回お届けします。